7 の続きの
お昼というか午前のお茶というかを集まった皆で食べて来たらしく、
午後をやや回ってから戻って来たイエスが、
「梵天さんは? もう帰られてしまったの?」
キミの方まで残念がってくれますかと、
ブッダ様がややカチンと来かかったことを訊いたのは、
まま良しとしようと飲み込んでから。
「梵天さんが 今日来られたのはね。」
手と顔も洗ったイエスへタオルを差し出し、
六畳間へ落ち着いてからは、冷たい麦茶をまずはどうぞと出しながら。
浄土からの来客が持って来た品とそれへの説明をイエスへも話して聞かせて。
「これが、そのご褒美の金一封なんだけど…。」
ブッダがそうと言い、
梵天から預かっていた水引つきののし袋を卓袱台の真ん中へ置いた。
わあ、印刷じゃないのを巻いたのをもらうのは初めてだと、
まずは水引に喜んでから、
ブッダへ“いぃい?”と訊いて手に取ったものの、
「…これって、何かの招待状?」
中に入っていたのは、見慣れた日本の紙幣ではなく、
ちょっと丈夫な厚紙製、
ところどころにフォログラム印刷もされた、
なかなかに凝った券が、結構な枚数入っていて。
「それはギフト券っていうの。
クレジットカードで有名な◎◎◎のだから、まま汎用性は高いほうかな。」
くすすと笑い、ほらと手を延べて来るブッダへ袋ごと差し出せば、
中に入っていた小さめの冊子を引き出しながら、
「額面のままお買い物が出来る券だから、
これだと五万円分ってところかな?
確かお釣りも出るはずで、一番使いやすいのではあるそうだよ?」
そんな風に説明してくれて、
やっとのことでイエスへもその有り難みがじわじわと判って来たものの、
「でもね、ギフト券って使えるお店が限られるんだよね。」
「え? そうなの?」
でも、その◎◎ってところのクレジットカード、
駅前の商店街でも“使えますよ”ってレジにシールが貼ってあるじゃない。
うん、カードはね、と。
イエスが不思議そうなお顔で訊いたのへ、
梵天自身からか、それとも
別の機会に 訊いたか確かめたかしたらしいブッダが、
キミの疑問も良く判るよと うんうんと頷いてから、
「ギフト券はカードとはまた清算の仕方が違うらしくてね。
そんなせいで、
大きなチェーン展開をしているスーパーや、それこそ百貨店ならともかく、
小売店やデイリースーパーなどでは、
結局 個人の間での交換と同じになってしまうから、
引き受けるのはご勘弁をってなるらしくて。」
「???」
クレジットカードでのお買い物は、
その場で現金を受け渡しせず、
会員登録しているお客様の口座から代金を引き落とすというシステムを、
ネットでつないで成り立たせている訳ですが。
ギフト券は言わば為替のようなもの、
額面代金分のお買い物が出来ますよ券なので、
理論上、最終的には発行元へ持ってけば現金化出来るのでしょうが、
そこへ至るまでの決済方法の仕組みが違い。
現金やカードに比して滅多に使うお客様も現れないことの処理のために
あらためて数社と契約するのも繁雑だからと、
個人経営の小売店ほど
“一切扱ってません”としているお店が 結構あるという実情なのだそうで。
*あと、扱ってるどころか発行している筋の系列店で使えないとか、
(某旅行社が出しているギフト券は
あくまでも“お買いもの券”だから旅行代金への決済には使えない、とか。)
お釣りが出ないといった 不思議券も堂々とあるそうです、ご用心。
そういう条件が付いている代物だということで、
さすがは天部、
無駄遣いしてはいけないよとクギを刺したかったか、
それとも“さあどう出るか”と苦行を課したつもりか。
「いやいや、ブッダ、それはないない。」
何でもそう解釈されては気の毒だよと、イエスが執り成しかかったものの、
それはそれは冷たい眼差しのまま、ブッダが返したお返事は、
「沖縄旅行を忘れたのかい?」
「う…。」
まあまあまあまあ…。(笑)
「…まま、彼らへの疑心ともかくとして。」
大人げない重箱の隅浚いだと気づいたものか、気を取り直したブッダ様、
券の束の端っこを摘まみ、
もう片やの端を ぴぴぴぴ…と順々にカードのように弾いて見せつつ、
「これって家電量販店でも使える会社のだから、あのね?」
私、いいこと思いついたのと、
んんんと咳払いをして見せてから、
「買いたいものがあるんだな、これで。」
そうと切り出したのが、イエスにはちょっぴり意外。
倹約家で、特に家電に関しては、
滅多なことでは増やすまいという方針を頑固に貫いている人なのにね。
それが欲しいものがあると言い出すなんてと、
キョトンとしてから、
「あ。もしかして新しい炊飯器?」
「違います。」
「じゃあじゃあ、あ・そうか、ホームベーカリー?」
「あのねぇ。」
イエス様、本誌寄りのネタをありがとう。(こらこら)
そんなにそういうのを欲しがってそうに見えたかなと、
ブッダの側こそ、やややと赤くなりながら、
「そうじゃなくて。」
彼なりのツッコミをご披露してから、
説明に要るのだろ、卓袱台へ乗せたのは自分のスマホ。
そこへ某家電量販店のページを呼び出し、
先日から展開中だというセールのあれこれを繰ってゆく。
AV関係のGW前後に出た新製品から、夏用家電の前倒し売り出しまでと、
一部イエスがきらりんと眸を輝かせそうな
パソコンやゲーム機ジャンルも掲載されたそれだったが、
「ほら、これ。」
「…? これって?」
ブッダが指さしたのは、そんな中の夏物家電のコーナー記事で。
「今時は、冷風扇っていうのがあるんだって。」
エアコンよりはお値頃で、消費電力もそれほど食わず、
なのに、扇風機やサーキュレイターと違い、涼しい風が出る器械。
「え? だってそんな。
冷やした風を出すなんて、
エアコンと同じ仕組みが要るってことでしょう?」
だったら、どんなに小型でも電気代とかかかるんじゃないのと、
イエスが案じるような顔をするのへ、
「これは そこまでの仕組みがあるものじゃあないんだよ。」
「??」
「あのね? 気化熱っていってね?」
お水が蒸発するときに、
回りの熱を取り込んで水蒸気になるって作用を生かしたもので、と。
一通りの説明をしたブッダだったが、
「……え〜と?」
イエス様とて、人の機微とか深く理解しておられる尊であり、
決しておバカな訳ではないのだけれど。
関心のないジャンルの 先進の機器の理屈なんてものまで、
いちいち覚えていてはキリがないというもの。
なので……キョトンとなさったその上で、
「もしかして…密教用語なのかな?」
怖々と訊いたくだりは、
ブッダ様と皆様の胸の内へ秘しておくということで。(う〜ん)
「ともかく。」
「うん。要は、涼しい風の出る扇風機なんだね。」
理屈はいいかと、イエスもあっさりしたもの、
普通一般の扇風機よりは機能が高いということらしいと納得し、
「最新のって気張らないなら、昨年の型でこのお値段なんだよね。」
「え? ちょっとおしゃれな扇風機と変わらないじゃない。」
「そう。しかも、自然な風だしね。」
エアコンの強引な冷却には、
室外機による排熱という自然への迫害がついて回るが…とまで話を広げると、
大元の電気はどうやって作っているのかって反論が降ってくるので
まま、相対的な検証はそこまでにしておくとして。(こらこら)
*ちなみに
家電各社が推すのは
エアコンと扇風機、若しくはサーキュレイターの組み合わせで、
そういう兼ね合いからか、冷風扇は あんまりチラシには掲載されていません。
チラシが頼みの綱の場合は、日本通販とかでしょかね。
あと、量販店ではお馴染みの山善さんとかが扱っておられて、
某あまぞんでも ググれば結構な品揃えで展開中でした。
ブッダがそれなりにスマホを駆使して集めた情報によれば、
保冷材やらリモコンが付いてますとか、除湿機能への切り替えありといった、
おまけ機能にあれこれこだわらないならば、
新型なのに1万円を切るものもザラにあるし。
おしゃれなタワー型 首振りタイプや、
資金に2台分出せれば冬は温風が出るものまであるそうで。
「部屋全体を冷やすとかいうのなら、エアコンを推すのも判るけど。」
「そっか、ウチの場合は…。」
お出掛けも多いし、何と言ってもここは仮の住まい、
一種 コンドミニアムのようなもの。(そこまで言う)
扇風機でも何とか頑張れなくはないとしていたくらいだから、
特に異存なんて出るはずもなく。
「いいね、これvv」
イエスも納得したらしく、
それは楽しそうに玻璃の双眸をキラキラさせるワクワクぶりへ、
ブッダもその顔が見たかったんだよと きゅうんとしておれば、
「熱帯夜になって、千々に寝乱れても大丈夫だねvv」
「…イエス、それってどこで覚えた言い回しなのかなぁ。」
やや淫靡な響きがしなくもないお言いようへ、
意味判って言ってる?と
赤くなりかかるのを何とか押さえ込み、
ついつい聞き返したブッダの“仏の顔”が減りかかったのはさておいて。(笑)
「ただ、そうともなると、あんまりのんびりもしてられなくてね。」
ブッダがスマホの電源を切り、これは別情報と続けたのが、
「ここんところの急な猛暑のせいで、
除湿機以外のこういったのも、
店頭にもたくさん並んでるそうだけど。
となると お値打ちものから売れてっちゃうかも知れないから。」
「あ、そうか。それは困るね。」
そういや昨年も話してたことがある。
エアコンとか省エネタイプのコタツとか、
そういう季節の商品を、そうそう毎年みんなして買うはずもないのに、
いくら桁外れの酷暑や厳寒になったからと言って、
毎年のように品薄とか言ってるのがおかしいとイエスが訊いたのへ、
『まずはお試しとばかり、
初回生産量が少ない商品なのかも知れないよ?』
今時の企業は、在庫を抱えないようにというのもちゃんと計算しておいで。
売れ残りを抱えるのは、無駄に空間と管理費が要ることだけに、
それをもちゃんと計算ずくで割り出せないと、
製造の企画案件として成り立たないほどだとか。
なので、いくら流行りそうでも買い手が見越せそうでも、
度を超すほどは生産されぬ。
今やネットを駆使すれば末端の店まで探せるご時勢なのだし、
残り数台を取り合いになる方が、いっそ宣伝になってマシなのだとか。
「じゃあ、急いで買いに行こう。」
「いや、今日の今からというのは中途半端だって。」
今にも飛び出さんというノリで、立ち上がりかかるイエスなのへ。
気持ちは判るし、煽ったのは私だけれどまあ落ち着いてと。
卓袱台に突っ張りかけた腕を捕まえ、
まあまあとブッダが身を寄せる。
「出来ればいろんな店を回って価格とか比べてみたいし、
何だったらネットでどういうのがあるかも調べられるみたいだし。」
「あ・そっか。」
どういう機能のとか、どのくらいの大きさのとか、
先に決められることもあるかもだよねと。
そこはネットに関わることだけに、イエスへも話が通じるのは早く。
よし来たとPCを早速開き、
どこまで買いに行く? 何ならまた秋葉原まで出よっかなんて、
ウキウキと言い出す始末だったりもして。
「まあ、重たかろうと配送してもらうことにはならないから、
どこまで出掛けても大丈夫だけど。」
さすがは力自慢のブッダ様、
そこは ちいとも案じておられぬらしかったが、
「…ただね。」
そこまでは はきはきしていた如来様、
なのに ふと…語調を陰らせ、声も弱めて訊いたのが。
「そのご褒美、全部を資金へって使ってもいいの?」
「え?」
だってあのあの。/////////
何だったら…イエスが欲しいなって言ってたタブレットとかいうの、
あと2万も足したら、結構良いのが買えるんじゃあないの?、と
電器店のサイトを巡ってるうち、
そちらへも目が行ってはいたらしいブッダ様。
そこはやっぱり、
イエスへのご褒美なのだしと、思うところもあったようで。
「勝手に 欲しいものって言い出したけど、
足りない分を出すくらいなら、
あのあの、出来なくはないんだよ?////////」
今頃言い出すなんて狡かったかな、ごめんなさいと、
ややもすると視線も降ろしての 俯いて訊くブッダなのへ。
意味が通じなかったのか、しばし呆然としてから、
「…何 言ってるの。」
そんな彼の螺髪へと、コツンと自分の頭を軽く当て、
くすすという含み笑いつきの声で、穏やかそうに言い返す。
「そりゃあPCにも望みはたんとあるけどね。」
嘘偽りは申しませんということか、正直なところを口にしてから、
「でも、
ブッダだけなら我慢出来るんだろうに、
夏の暑さが大変だったのを、
真っ先の最初に思ってくれたんでしょう?」
ふふーと微笑って、まだ俯いたままな伴侶様の、
でもでも、じわじわと赤くなりつつある耳朶を
何て愛おしいと 目許細めて眺めやるヨシュア様であり。
大変そうだったのは果たして誰か、
キミの福耳をやたら当てにしていたのは
一体 誰だったかを思い出してくれて。
「それでのこと、
冷風扇ってのがあるんだ、
これならって思ってくれたんでしょ?」
そんな優しい思いつきに、どうして否やなんて言い出せるの?と、
低められたお声が訥々と紡ぐ。
声の甘さも 言葉の甘さも、
どちらもが諸共に ブッダの身のうちに甘い微熱をそそぎ込むようで。
“う〜〜〜。//////”
言い過ぎだよぉと言い返すにしても、
含羞みが強すぎてのこと、お顔が上げられない始末だったりし。
そんなブッダだと気づいているやらいないやら、
「自分のことしか考えない人だというのなら、
それこそホームベーカリーとか、
ちょっと前に流行った温風フライヤーとか、
あ、サイクロン式の掃除機とか?」
そういうのをこそ欲しいって考えるんじゃないの?、と。
どうだ優等生の答えでしょうとの にっこり付きで告げ終えて。
「…ぶっだ?」
俯いたままのブッダなのは、ちょっぴり心配でもあったれど。
無理強いはせずの こちらからちょっぴり顔を下げ、
額の隅のこめかみへ、触れるだけの軽いキスを落としてから。
微妙に片やが斜めを向いたそのままでもいいと、
長い腕、ゆったり回して、愛しの伴侶様を懐ろへと抱え込む。
じゃあ明日、お買い物に行こうね?
………うん。/////////
やっぱり秋葉原まで出ようよ、お店いっぱいあったじゃない。
……うん。/////////
わあ、何か今から夏まで楽しみになって来たなぁvv
…。//////////
おや、最後のへは頷いてくれなんだと。
懐ろの中の人の様子が 気になったイエス様。
とはいえ、今更 お〜いと覗き込むのも何だしなぁと、
掻い込む腕をもぞもぞと、どうしたもんかと動かしてから、
こうまで間近なのにね。
間近すぎても見えなくなるんだね、と
困ったように苦笑しておれば、
「 ………え?」
背中側から、不意にシャツをつんつんと引かれ。
え?え? 誰だれ?と、まずはそんなところへハッとし、(おいおい)
次には、いつの間にかそちらからも
こっちの背中へ腕を回して来ていたブッダだと気がついて。
「…あ。えっとぉ。////////」
無言のまま 何がご所望の彼なのか。
もっと ぎゅうしてだろか、それとももう一回キスなのかなぁ。
咄嗟にえっとえっとと想いを巡らせ、
「…………………あ。///////////」
それが指すものの中、
いやに艶っぽくも嬉し恥ずかしいことが増えたのへ、
「えっとぉ。…これ、のこと、かなぁ?//////////」
真っ赤になって シャツの襟元を摘まみ、
そうと訊き返したイエスだったのへ。
「あ…、いやあの…。/////////////」
シャツを引いたのへ そんな訊きようをさせたブッダの方までが。
何でそう思ったのかへ遅ればせながら気づいてのこと、
あわわと慌ててお顔を上げ、ますますと赤くなるのが…いとをかしvv
「そ、そうじゃなくて。/////////」
「だよねぇ。まだ明るいしぃ。/////////」
やっと視線が合わせられ、
お互い どう勘違いしたかへ、含羞み直して。
「あ…やだ。////////」
「わ、ぶっだ。//////////」
とうとう螺髪がわさりと弾け、
背中は深色の髪に覆われ、
お顔のほうは愛しいお人の懐ろへ深々と埋まってしまった如来様。
わわ。ねえねえ、いい加減 お顔見せてよぉ。
〜〜〜〜。////////
やんやんじゃあなくて、ねえ。
〜〜〜〜。////////
よぉし。だったら脱いじゃうぞ。
そんでもって、あのその、あの、
キミんこと、剥き出しんしたお胸で
ぎゅうしちゃうんだからねっ。//////
〜〜〜〜。////////////////
やんやんじゃあなくて、ねえねえねえ。///////
この暑いのに
まあ、もうもう、まあもうもう。
相変わらずのお二人で。
………………やってなさい。(笑)
お題 3 『大好きな仕草』
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*いやいや、またぞろちょっと微妙なお題の消化になってますが。
仕草や癖ってあったかなぁと思い出しつつ、
ブッダ様が照れると螺髪が解けるとか、怒ると光るとか
イエス様がありがたいこと考えてると身が浮遊するとか、
いやあれは癖じゃないだろうと、なかなかまとまらなかったので。
だからって、こういうもの引っ張り出すのも大概ですが。(笑)
しかも“好きな仕草”です。
実は 好きなんですね、お誘いが。(大笑)
めーるふぉーむvv
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